ライフハックの源流の一つに、Getting Things Done(GTD)というものがあります。ざっくり説明すると、あらゆるタスクを書き出して、頭の中をスッキリさせ、そのうえで2分以内でできるタスクはすぐ済ませる。こうしたシンプルなルールでシステマチックに処理するタスク管理の優れたアイデアです。これによって、今やるべきことだけに集中してタスクを処理できるようになります。
しかし、僕自身は結局、長続きませんでした。タスクを書き出す時間がなかなか持てないのもそうでしたが、書き出したところで、ストレスがなくならなかったからです。プロジェクトが同時並行で進めれば進めるほど、
・締め切りに間に合うのか、わからない不安が増える
・優先順位付けの複雑さが増して、優先順位の判断が難しくなる
からです。
副業、兼業時代のスケジュール管理
働き方改革が進み、副業、兼業時代が到来しようとしています。ひとつの会社に勤めるのではなく、複数の会社で複数のプロジェクトを同時進行させる時代です。そのとき、もっとも重要なのは、自分にどれくらいの時間的余裕が残されているかという判断です。
GTDは原理的に、その判断ができません。二週間後にクライアントに提案しなければならないプロジェクトに参加してよいかどうか、判断ができないのです。それはひとえに、時間リソースと紐付いて管理できていないからです。
この時間リソース管理は、独立するとより一層、重要性を実感します。こうした自分の時間的余裕がそのまま自社のリソースとなるからです。大企業であれば、自分ができなくても他の人が代わりに対処してくれます。(もちろん属人的な業務もありますが、それを組織的に対処するのがマネージャーの仕事です。)
しかし、個人事業主として働くようになると、代替がききません。時間がなくなれば仕事は受けられず、失注します。時間もないのに大きな仕事を受けてしまえば、質を犠牲にしますし、無理がたたって体調を崩してしまうかもしれません。僕も当初、そうした状況を経験しました。いわゆる修羅場です。
今では、半年先のスケジュールも想定できるようになりました。仕事の負荷と時間的余裕を見ながら、半年先の仕事も、状況によってはお断りしています。
「自分へのアポ」を入れることで、空き時間を見える化し、無理のない働き方を実現できるのです。
10%の時間リソースのバッファーをみる
こうして「自分へのアポ」を入れていくと、ついついスケジュールをびっしり、テトリスのように埋めてしまいがちです。そうすると、ひとつでもタスクが遅れると一気に計画が崩れます。風邪でもひいたものなら、大変なことになるでしょう。
プロジェクトマネジメントには、リスクマネジメントという領域があります。そこでは、あるトラブルが起こったときの確率とインパクトをかけ合わせて、そのリスクを算出します。たとえば、部品の納品が遅れる可能性が10%あったとして、その納品遅れを取り戻すのに100万円かかるとします。そのリスクに対処するために、100万円x10%=
10万円の余裕(バッファー)を見ておくわけです。
さきほどの風邪の例でいえば、冬の三ヶ月間、をひく確率が20%だとして、そのときのインパクトが5日分だとすると、5日x20%=1日分のバッファーを持たせておくことになります。
そうしたさまざまな要因を想定していくと、経験上ですが、およそ10%ほどのバッファーを見ておくとよいと思っています。一週間40時間の就労時間のうち、10%にあたる4時間の空き時間をもっておく。これだけでも、万が一の場合に対する余裕が全然違います。まとまった時間でなくても、細切れに1時間ずつ4コマ、あけておくのでも問題ありません。一言で言えば、仕事を詰めすぎない、ということですね。