この二つの記事の続きです。
ヴィゴツキーが「頭一つの背伸び」と呼んだ発達過程はどのようなものなのか。ニューマンとホルツマンはそれをパフォーマンスと呼ぶ。自分でない人物を演じることによって、自分が何者かであるかを創造する活動だという。環境に対応するために学ぶというのではなく、環境に合わせて「演じ」ながら違う自分へと変わり、同時に環境も作り直し世界を転換させていく。ヴィゴツキーが取り組んだのは、こうした創造のプロセスであり、その創造のプロセスはソロではなくアンサンブルで行われる。このアンサンブルをパフォーマンスと呼んだのだ。
ホルツマンはさらにこれを「非パラダイム主義」だと指摘する。パラダイムは、行為よりも先に思考を優先し、思考によって行為が起こると考える。しかしここでパフォーマンスと呼んでいるものは、そうした思考優位の話ではない。従来の心理学からのパラダイムシフトは起こっているが、これは新しいパラダイムを提示してそのパラダイムに従って行為が変わるとするものではなく、思考と行為とを統合して考える非パラダイム主義なのである。