『君の名は。』のヒット。ここ最近、映画を真剣に見てこなかったけれど、新海誠監督の過去作品を辿ってみた。
ネタバレあり。
『ほしのこえ』はiTunesで200円で購入できる。この作品でも、届かないメール、断絶するコミュニケーション、宇宙の時間軸、雨や雲の流動する地上の時間、時間のズレ、都会の空を横切る電線などのモチーフがここかしこに散りばめられている。
この作品を見ると、『君の名は。』でも起こっていた時間のズレが「彼岸と此岸」の時間のズレだということがわかる。死に別れると、亡くなったときのまま時間が止まる。しかし確かに隣にあるパラレルワールド。
8光年離れた二人。お互いのメールが届くのに、8年ちかくかかる距離。そこで、文字化けをしながらも奇跡的に届くメール。書かれたときから8年かかって届くメールの〈今〉とはいつのことだろう。永遠にすれ違うように思うその距離のなかで、ふたりはいう。
「ここにいるよ」。
これは、神の視点から見て二人が同時に存在している、という話をしているのではない。距離が離れながらもお互いの存在を感じ合う、光の速度を超えた、量子論的な世界観だ。彼岸と此岸にある時間のズレは、〈今ここ〉が(空間的メタファーを使うとすれば)立体的に拡張していくことになる。
過去も〈今ここ〉であり、未来も〈今ここ〉。コミュニケーションの断絶によってむしろ、世界はパラレルに接続されていく。