西垣通は生命情報やその担体を「それによって生物がパターンをつくるパターン(a pattern by which a living thing generates patterns)」と定義した。
生物によって世界が異なって認識される「環世界」などの概念を提唱したユクスキュルは『生命の劇場』のなかでこのように書く。
ただ生命のみがゲシュタルトを生み出すのであり、したがってまた、生物はゲシュタルトを生み出すゲシュタルトである、と

- 作者: ヤーコプ.フォン・ユクスキュル,入江重吉,寺井俊正
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/02/10
- メディア: 文庫
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生命論的観点からビジネスモデルを捉えるのであれば、同じような入れ子構造の定義が適切であろう。すなわち、生命論的ビジネスモデルとは、ビジネスモデルを生み出すビジネスモデルである、と。
企業が捉えている市場は、その企業にとっての独自で主観的な認識に基づく環世界を構成しており、その環世界に対応するゲシュタルトを生み出している。ゲシュタルトをビジネスの文脈で言えば「価値」ということになる。企業とは、世の中のさまざまなリソースに価値を見出して、顧客への提供価値を作り出すはたらきを持っている。
新しい価値を生み出そうとすれば、必然的にリソースや活動を変えていくことになり(作用世界)、その結果、環世界も変化する(知覚世界)。小売店であったユニクロとSPAとなったユニクロ(異なる作用世界)とでは、世界はまったく異なったもの(異なる知覚世界)として認識される。これを《機能環》と呼ぶ。
生命論的ビジネスモデルは、知覚器官と作用器官の間でゲシュタルトを生み出すものであり、(同語反復のように聞こえるかもしれないが)ビジネスモデルを生み出すものなのだろう。逆に言えば、みずからを創出しないビジネスモデルは機械論的であり、生命論的な文脈では捉えられない。(ビジネスモデルを9つに分類、とかそういう類のもの。)
ちなみにこのユクスキュルの本は、芦田先生が中西先生に出されたお正月の宿題。イギリスへ持っていくほどではないと書かれていますが、面白いです。
(まあイギリスへ持っていくほどの本ではないのですが)、それよりは『生命の劇場』(ユクスキュルの遺稿ですが)の方がおもろい。 RT @daihiko: 『生物から見た世界』は買いましたが、日本にあります……。 RT @jai_an: あなたに正月から宿題を出したいんだけれど…
— 芦田宏直 (@jai_an) 2016, 1月 2