ユネスコ(国連教育科学文化機関)が、世界記憶遺産に中国の申請した「南京大虐殺の記録」を登録したことに対し、安倍政権内から反発が出ている。菅義偉官房長官は13日、分担金支払い停止を検討する考えを示した。
南京での民間人への虐殺が「全くなかった」という主張をしている人は、ほとんどいないと思う。僕も「なかった」とはつゆほども思わない。ただそれが「大虐殺」と呼ぶような事態が発生していたかどうかについては、諸説あり分からない。「人数の問題ではない」といういう人もいて、そういう主張も心情的には分からなくないけれど、「当時の南京の人口以上の30万人が虐殺されたということを認めろ」という話は、かなり無理があると思う。
しかし、この記録が登録されたからといってユネスコ分担金を停止するという話は、やや早急だと思う。登録されてしまった以上、こうした数字についての不自然さと、そこにある政治的意図について、他の国と共有する機会だと考えたほうがよいだろう。
この点について、冷静なコメントを寄せているのが、ユネスコの事務局長を務めた松浦晃一郎元駐仏大使だ。
登録は日本外交にとって“敗北”との認識を示し「中国の中長期の作戦に気づかず、対抗手段を取ってこなかった」と批判。記憶遺産事業の制度改革のために「日本と同じ考えを持つ国と手を結ぶべきだ」と指摘した。
気になるのが、外務省の体質だ。これが、単なる外務省の怠慢だということですめばいいのだけれど、中国による登録に異議を唱えることをしなかったのはなぜか、という疑問が残る。ここにあるのは、「異議を唱えない」という消極的ボイコットが、外務省によって行われた可能性だ。中国政府は、2014年6月の記者会見でも、この登録についてコメントしていた。すでにわかっていた動きだったはずだが、ロビー活動をしてこなかった。
さて、中国に関して重要なのは、中国政府が南京事件の資料を記憶遺産に登録申請する方針を早くから公表していた事実である。中国外務省の華春瑩報道官は2014年6月の記者会見で次のように述べていた。
「中国は『記憶遺産』の登録に積極的に取り組んでおり、このほど『南京大虐殺』と『従軍慰安婦』に関する 貴重な歴史資料の登録申請を行った」
(中略)
ユネスコを道具にして記憶遺産登録を利用する対日宣伝戦は、ほぼ1年半も前に公然と宣言されていた。だが日本の外務省が中国の登録活動を阻もうとした形跡は、今年10月のユネスコの最終協議以前はまったくない。こうした点から、日本政府はタイムリーな活動が欠如していたと言わざるをえない。
こうした中国の動きがあったことを、外務省の誰もしらないという状況は考えにくい。現政権は民主党ではなく自民党であり、しかも安倍政権でもあるので、こうした中国の情報が共有されていたら、しかるべき対応をしたはずだ。それがなされなかったということは、おそらく政権にこの情報があがっていなかったと考えられる。外務省の中に「右傾化を阻止する」ということに共感する層が、「知らなかったことにした」可能性を否定できないと思う。
これについては伏線があって、安保法案で自民党の呼んだ参考人が「違憲」と言った話も、「なんでそんな人をわざわざ自民党が呼んだんだ」という話になった。これもやはり官僚が手配していて、青山繁晴さんが言うには、ここに中国のインテリジェンスが入り込んでいるらしいのだ。
僕は勿論記者出身なんで、その経緯をもう一回調べたら、ありとあらゆる証人は、役所に全部丸投げされてて。
そして今回も、なんと責任者の船田さんも含めて、誰が国会に現れるかを知らないんですよ。役人に任せたまま。
飯田:当日まで知らないと
青山:それで、その推薦した人、つまり役所の中に中国の手が入ってんですよ。
これはインテリジェンスにも関わってる人だから名前は拷問されても生涯言いませんけど。
火曜日の早朝会った時に、この推薦した役所の中に中国人の手が入ってると。
僕は証拠もあると言ったら、この政権中枢は当然否定すると思ったら、その通りですと言ったんですよ。
だから、中国による倒閣運動が始まってて。
それも中国は普段から備えてるから、どういう政権が現れても中国が気に入るんだったら支えるし、気に入らなかったら潰すってことを普段からやってる長年。
これはアメリカに対してもやってるけど日本にだけやらないわけないでしょ。
この話をどこまで信じていいかは判断できる立場にはないけれども、今回のユネスコによる登録を見て、あらためて、外務省の中には中国のこうした動きを「知らなかったことにする」という消極的な行動でもって支持する層が、一定、いる可能性が高いということを、改めて認識した次第。