金曜日にはある大手システム会社、土曜日には東京農工大でのワークショップを行いました。いずれも、すでにあるビジネスコンセプトについて、顧客視点から見直していくものでした。農工大は、企業実践イノベーションリーダー育成プログラム(EDGEプログラム)の一環として実施しました。
技術系の企業や、農工大のような技術先行型の組織においては、ついシーズから企画を立ててしまいがちです。僕自身は、最初はそれでも構わないというスタンスをとっています。技術革新によって可能になったイノベーションは、たとえばIT技術含め、数えきれないほどあります。
しかし重要なことは、IT技術をどのように応用するのかということです。シーズ起点でスタートしたとしても、どこかのタイミングで顧客からのニーズとマッチさせないといけない。場の研究所の清水博先生が〈場〉の説明で使われている「鍵と鍵穴の相互誘導合致」が必要です。技術シーズの側からもニーズに合わせて応用が必要だし、ニーズの側も登場した新しい技術にあわせて、相互に誘導されながら変化していくのです。
この金・土で行ったのは、いわばシーズとニーズの相互誘導合致のワークショップでした。手順は以下のとおりです。
- 3〜4人一組でチームを作ります。
- 各チームにひとつずつビジネスコンセプトを割り当てます。
- そのビジネスの想定される顧客セグメントを複数リストアップします。
- チームメンバーがひとり1セグメントずつ担当し、バリュープロポジションキャンバスを作成します。
- チームメンバーで共有します。
このプロセスを行うと、あるビジネスコンセプトが顧客セグメントに合わせて、七変化していくことがわかります。たとえば、ダイエット支援サービスを企画したとして、それが40代男性と20代女性とでは、サービスの内容は大きく異るはずです。またその目的が、体力づくりなのか、健康になるためなのか、美容なのかによっても、変わってくるでしょう。
たとえば、スマホで受けられるビジネススクールというコンセプトは、40歳前後の家族を持つ男性というセグメントに特化したとき、「部下の育成」や「家族との時間」という要素がでてきます。
※当初のVPC
※新しい価値が加わったVPC
大切なのは、ひとつのビジネスコンセプトが顧客セグメントによって大きく変わっていくのだという体験です。シーズの活用方法は、顧客ニーズという文脈に大きく依存している。このことを短時間のうちに理解するためにも、このような顧客セグメント別の価値提案デザインのワークを実施することが重要なのです。