アウトプットのテクニックとして、プライベート・ライティングという方法を使います。これは、とにかく思いついたことを書きだすというもの。たとえば「おなかがすいたな」と思ったら、それが仕事と関係なくても、「おなかがすいたな」と書く。手と脳を直結させるのです。
こうして手を動かしていると、そのうち、頭で考えたことがそのまま手に伝わっていくような感覚になっていきます。内容はとにかく、くだらなくても気にしない。思ったことがすぐ書きだされる状態に持っていくのです。
この方法を使うと、とにかくアウトプットスピードが劇的に上がります。僕が本を書くとき、これまで三〇分で五〇〇字程度でしたが、この方法を導入してからというもの、平均で三〇分一五〇〇字、最高で三〇〇〇字近くまで行くようになりました。前著『クラウドハック』では、この方法を使って一冊分の分量である一〇万字を、三五時間で書き上げています。
今回はそれよりは少し下がって、三〇分一〇〇〇字のスピードでした。各内容によってやはりばらつきがあり、前回のようなノウハウ一辺倒の本よりは少し時間がかかり、小山分(七万字)を書くのに、三五時間という結果でした。
これはもちろん、本を書くだけにとどまりません。企画書や報告書を書くときにも応用が利きます。ブログやツイッターもそうでしょう。とにかく想像以上の効果を実感できるはずです。
ちなみに、このプライベート・ライティングを成功させる秘訣として、次のようなものが挙げられています。
【大原則】自分の書いたものを他の誰にも見せないこと
(1)自分のくだらない考えや、下手な書き方を許容すること
(2)手を止めずに書き続けること
(3)時間を決めて取り組むこと
(4)ウソのない素直な考えを引き出すこと
(5)自分の思考を限界以上に発展させること
(6)行き詰まったら、視点を変えてみること
特に重要なのは、大原則である、書いた内容を誰にも見せない前提で行うこと。人に見せようと思って書くと、どうしても文章をチェックしようとする気持ちが働き、アウトプットを阻害してしまうのです。(ちなみにプライベート・ライティングという名称は、「人に見せないプライベートな内容」というところからきています。)
プライベート・ライティングで書き上げたら、今度はそれをチェックします。こまかな表現はもちろん、文意が通っているか、ロジックは破綻していないかなどのチェックを行うのです。これを経ないと、人に見せられる状態ではありません。
しかし、ここが重要なのですが、脳で起こっていることをそのまま書きだすことによって、脳のパフォーマンスは最高まで高められます。それを、ロジックのチェックなどでスピードダウンしては、非常にもったいない。そうせずに、チェックのプロセスはあとに回す。アイデアを出すときには、アウトプットだけに集中することが重要なのです。
ちなみに天才と言われている人は、このプライベート・ライティングの状態で、非常に高いクオリティのアウトプットができる人たちです。あっという間に名曲を作ってしまうモーツアルトとのように、頭の中のものをそのまま外に出すと、それが「すごい!」というものになっている。
いきなりそこまではいけませんし、一生かかっても無理かもしれません。しかしすくなくとも、プライベート・ライティングによって、スピードだけは追いつけます。そのスピードを維持したまま質を高めていけばいいわけです。
(『IDEA HACKS!2.0』より)

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