スクエアエニックスが無料でドラゴンクエストⅠを配信してニュースになった。ドラコンクエストポータルアプリをインストールしてからダウンロードする方法で、これにより350万人のユーザーとのコンタクトポイントができあがった。
実際に500円程度で販売していれば、15億円の収益となったはずだが、もちろん無料ほどのユーザーは集まらなかっただろう。そう考えて、(多めに見積もって)3分の1程度が購入したと考えれば、5億円程度の機会損失だといえよう。
350万人を獲得した広告費として考えれば、格安だ。一人あたりに直せば142円。
累計6200万本以上を出荷するスクウェア・エニックスの人気ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズが、スマートフォンへの展開を本格化させている。11月28日から「1」のゲームアプリを無料配信した(12月10日で無料期間終了)のを手始めに、12月12日からは「8」のゲームアプリ配信も始めた。
ポータルアプリは初日の100万DL以降も好調で、その後350万DLまで伸ばした。500円の価格設定だった初代ドラクエのゲームアプリを無料配信したことで単純計算で約15億円の売り上げを失ったわけだが、300万人のファンを数日間で“囲い込んだ”ことを考えると、その宣伝効果はむしろ大きかったといわざるえないだろう。
つづくドラゴンクエスト8は単独アプリでのリリースとなったが、 今後はこのポータルを通じてゲームが配信されていくことになるだろう。
こうしたポータル展開は、従来ゲームコンソールのメーカーだけが可能だった。コンソールはユーザーが多ければ多いほど価値が高まるプラットフォームなので、当然寡占化が進む。セガも脱落せざるをえなかった。
しかも、技術の進展によりプラットフォームを定期的に更新しなければならない。そのタイミングで、たとえばWiiUのように、大幅にユーザーを減らしてしまうことになるリスクもある。ゲーム会社がポッと参入するにはたいへんな事業だ。
しかしネットワーク上でゲームが動くようになると、どのゲームメーカーも自社プラットフォームを構築できるようになってきた。デバイスはiPhoneやAndroidなどの汎用ツールであり、ユーザーにとっても個別にコンソールを購入するようなリスクも少ない。
こうしたプラットフォームが増えていくと、これから、ゲーム一つ一つを売っていくというより、ドラゴンクエストのようにひとつの世界観を共有したゲーム群を提供していくことになるだろう。これから、ゲームをハブとしたコミュニティ運営がゲーム会社の主要活動となっていくはずだ。
その意味で、GREEやモバゲーのソーシャルゲームは、こうしたゲーム世界観を共有するゲームコミュニティの通過点にしか過ぎなかったのかもしれない。